煙突の煙は地球にやさしいか?
新築を機に薪ストーブを検討されているお客様から、煙突から出る煙は環境にどうなんでしょう?
という主旨のお問い合わせがありました。
その辺の事情はプロに聞くのが一番と、薪林舎代表の麻木さん(以下:A)に伺いました。
冬のヨーロッパ
地球温暖化とか、環境問題が盛んに取り沙汰されています。
薪ストーブに関する規制が気になりますが?
A) まずはカーボンニュートラルと薪ストーブの関係についてお話しします。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させ、プラスマイナスゼロにすることをいいます。
木々は成長する際に薪ストーブが排出する二酸化炭素を吸収し、酸素に変えて地球に還元してくれます。それに加え、植林などが適切に行なわれているので炭素排出は相殺されると、従来はみなされてきました。ですので薪ストーブはカーボンニュートラルというのが定説でした。
しかしEU圏内の大都市部における大気汚染は、年々深刻な問題となっています。
原因は自動車、特にディーゼル車の排気ガス(粒子状物質PMや窒素酸化物NOx)と暖房器具からの排出ガス(PMやスス)にあるとして、それぞれに対策が実施されることになりました。
ガソリン車とディーゼル車の製造は将来的には禁止。薪ストーブは、排気がクリーンなストーブ以外認められないと、2010年の欧州議会で可決されました。
では、薪ストーブに逆風が吹いているわけですか?
A) エコデザインという言葉を耳にしたことはありませんか?
エコデザインとは、別名「環境配慮設計」と呼ばれ、製品のエネルギー効率や環境への影響を改善するための規制です。
EUでは2018年に新たな薪ストーブのエコデザイン指令が導入され、薪ストーブの設計・開発・製造には環境への影響を考慮して特定の基準を満たすことが義務付けられるようになりました。
これによって、製品の環境性能が向上し、消費者のエネルギー消費や環境負荷が削減されることが期待されています。
アメリカでも環境保護庁(EPA)が規則を制定しました。こちらは特定の排出ガスレベルを満たすことが要求されます。
日本でも、エコデザインに関する取り組みが進んでいて、省エネルギーや排ガスの基準が定められ、製品の適合性が評価されています。
こういった事情で、最近の薪ストーブには煙突から出る煙を再燃焼させることで効率を高める二次燃焼技術が採用されています。
その結果、燃焼効率が格段に向上し、同じ量の燃料を使用してより多くの熱エネルギーを生成することが可能になって、地球の健康にも貢献しています。
ちょっと古い薪ストーブは足元にも及ばない性能の機種が出現する一方、対応できないブランドは市場から姿を消しつつあります。
むしろ薪ストーブは、淘汰されることによって追い風が吹きはじめているように思えます。
HETA(潟上市) |
hunterstove(秋田市) |
Altech(秋田市) |
性能が良くなると取り扱い方も変わるのですか?
A) どんどん地球にもユーザーにもやさしい方向に進んでいます。
ただし薪ストーブに限ったことではないですが、どんなに高性能な製品でも使い方を誤ると本来の性能が発揮できないですよね。簡単なので最初に正しい付き合い方から教わりましょう。
燃焼の基本は
1) 適切な薪:
乾燥した薪を使用することが重要です。
湿気の多い薪は燃焼効率が低く、煙や有害物質を多く発生させます。
2) 空気供給:
燃焼に適した空気の供給が必要です。
過剰な空気供給は燃焼効率を低下させます。空気の不足は不完全燃焼を招き、有害物質を生成します。室内の換気とともに適切なその薪ストーブに合った空気調節の方法を覚えましょう。
簡単に言えば、立ち上がりの際に細い薪から丁寧に火を育てていく感じでやれば、クリーンな燃焼が実現できます。
HETA(大仙市) |
HETA(大仙市) |
HETA(秋田市) |
薪の乾燥方法についてのアドバイスは?
A) まずは、伐採時期について。
落葉して含水率が落ちた12月から2月ごろまでに切った木を、5月の連休くらいまでに薪棚に積み上げることができれば、11月下旬には薪として使うことができます。
乾燥の仕方。
屋根付きの薪棚に積み上げますが、側面は木口を露出させます。風と雨と太陽で濡れたり乾いたりを繰り返すことで理想的な薪に仕上がります。
濡れた木口の乾燥/蒸発とともに薪内部の水分が引っ張り出されることで乾燥に拍車がかかるわけです。薪を濡らしたくないからと側面を覆ったりすると却って乾きません。
ただし、秋田県内ではお盆以降に木口を濡らすと乾ききらないので、この時期を過ぎると側面は覆った方がいいかと思います。
こう言うと薪ストーブってかなり面倒だなと思われるかもしれませんが、わざわざ長い原木や、玉材という30〜40cmの長さの丸太の状態で購入して、自分で切ったり割ったりしながら、趣味としての薪作り、薪ストーブライフを堪能されている方も大勢いらっしゃいます。
何もそこまでと思われる方は、信用のできる薪屋さんからきちんと仕上がった薪を購入されるのが一番ですが。
薪ストーブクッキング
薪ストーブの設置場所は?
A) 新築の場合、実施図面完成前に専門家の助言に耳を傾けることをおすすめします。その場合、間取り図のような簡単な図面を持参するのがいいと思います。
建物の都合で、排気効率がやや低下する「曲がり」や「横引き」を採用せざるを得ない場合もあります。しかし、十分に乾燥した薪をご用意いただくことで排気効率の極端な低下を防ぐことができます。湿ったり、雪で濡れたりした薪を使うと、火着きの悪化や煙突掃除回数の増加など、影響が即座に現れます。
建物と煙突の関係は?
A) 煙突の設置は、できれば外壁に沿って配置するのは避けたいと考えています。これは台風など極端な気象条件における破損や、断熱層への水の侵入などのリスクを防ぐためです。
天井を通って専用のチムニーフラッシング経由で屋根に立ち上げる施工方法がおすすめです。
秋田など積雪地帯特有の「すが漏れ」を心配される方もいらっしゃいますが、私たちが採用するチムニーシステムは、日本の住宅の建築構造と国内各地域の気象条件を知り尽くした、秋田県内においても豊富な実績がある製品です。
チムニーフラッシング(大仙市) |
ステンレスフラッシング(秋田市) |
ゆらゆら揺れる炎。薪がはぜる音。
側にいるだけで芯から体が暖まる感じ…
薪ストーブには、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という
人の五感に訴える癒し効果あるそうです。
自宅のリノベーションを機会に薪ストーブを導入される方も多いんだとか。
どうですか、薪ストーブライフ。
私は味覚の癒し派ということで、オーブン付きかな?
(協力:薪林舎代表 麻木 聡さん)
煙突の煙は地球にやさしいか?
新築を機に薪ストーブを検討されているお客様から、煙突から出る煙は環境にどうなんでしょう?
という主旨のお問い合わせがありました。
その辺の事情はプロに聞くのが一番と、薪林舎代表の麻木さん(以下:A)に伺いました。
冬のヨーロッパ
地球温暖化とか、環境問題が盛んに取り沙汰されています。
薪ストーブに関する規制が気になりますが?
A) まずはカーボンニュートラルと薪ストーブの関係についてお話しします。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を均衡させ、プラスマイナスゼロにすることをいいます。
木々は成長する際に薪ストーブが排出する二酸化炭素を吸収し、酸素に変えて地球に還元してくれます。それに加え、植林などが適切に行なわれているので炭素排出は相殺されると、従来はみなされてきました。ですので薪ストーブはカーボンニュートラルというのが定説でした。
しかしEU圏内の大都市部における大気汚染は、年々深刻な問題となっています。
原因は自動車、特にディーゼル車の排気ガス(粒子状物質PMや窒素酸化物NOx)と暖房器具からの排出ガス(PMやスス)にあるとして、それぞれに対策が実施されることになりました。
ガソリン車とディーゼル車の製造は将来的には禁止。薪ストーブは、排気がクリーンなストーブ以外認められないと、2010年の欧州議会で可決されました。
では、薪ストーブに逆風が吹いているわけですか?
A) エコデザインという言葉を耳にしたことはありませんか?
エコデザインとは、別名「環境配慮設計」と呼ばれ、製品のエネルギー効率や環境への影響を改善するための規制です。
EUでは2018年に新たな薪ストーブのエコデザイン指令が導入され、薪ストーブの設計・開発・製造には環境への影響を考慮して特定の基準を満たすことが義務付けられるようになりました。
これによって、製品の環境性能が向上し、消費者のエネルギー消費や環境負荷が削減されることが期待されています。
アメリカでも環境保護庁(EPA)が規則を制定しました。こちらは特定の排出ガスレベルを満たすことが要求されます。
日本でも、エコデザインに関する取り組みが進んでいて、省エネルギーや排ガスの基準が定められ、製品の適合性が評価されています。
こういった事情で、最近の薪ストーブには煙突から出る煙を再燃焼させることで効率を高める二次燃焼技術が採用されています。
その結果、燃焼効率が格段に向上し、同じ量の燃料を使用してより多くの熱エネルギーを生成することが可能になって、地球の健康にも貢献しています。
ちょっと古い薪ストーブは足元にも及ばない性能の機種が出現する一方、対応できないブランドは市場から姿を消しつつあります。
むしろ薪ストーブは、淘汰されることによって追い風が吹きはじめているように思えます。
HETA(潟上市)
hunterstove(秋田市)
Altech(秋田市)
性能が良くなると取り扱い方も変わるのですか?
A) どんどん地球にもユーザーにもやさしい方向に進んでいます。
ただし薪ストーブに限ったことではないですが、どんなに高性能な製品でも使い方を誤ると本来の性能が発揮できないですよね。簡単なので最初に正しい付き合い方から教わりましょう。
燃焼の基本は
1) 適切な薪:
乾燥した薪を使用することが重要です。
湿気の多い薪は燃焼効率が低く、煙や有害物質を多く発生させます。
2) 空気供給:
燃焼に適した空気の供給が必要です。
過剰な空気供給は燃焼効率を低下させます。空気の不足は不完全燃焼を招き、有害物質を生成します。室内の換気とともに適切なその薪ストーブに合った空気調節の方法を覚えましょう。
簡単に言えば、立ち上がりの際に細い薪から丁寧に火を育てていく感じでやれば、クリーンな燃焼が実現できます。
HETA(大仙市)
HETA(大仙市)
HETA(秋田市)
薪の乾燥方法についてのアドバイスは?
A) まずは、伐採時期について。
落葉して含水率が落ちた12月から2月ごろまでに切った木を、5月の連休くらいまでに薪棚に積み上げることができれば、11月下旬には薪として使うことができます。
乾燥の仕方。
屋根付きの薪棚に積み上げますが、側面は木口を露出させます。風と雨と太陽で濡れたり乾いたりを繰り返すことで理想的な薪に仕上がります。
濡れた木口の乾燥/蒸発とともに薪内部の水分が引っ張り出されることで乾燥に拍車がかかるわけです。薪を濡らしたくないからと側面を覆ったりすると却って乾きません。
ただし、秋田県内ではお盆以降に木口を濡らすと乾ききらないので、この時期を過ぎると側面は覆った方がいいかと思います。
こう言うと薪ストーブってかなり面倒だなと思われるかもしれませんが、わざわざ長い原木や、玉材という30〜40cmの長さの丸太の状態で購入して、自分で切ったり割ったりしながら、趣味としての薪作り、薪ストーブライフを堪能されている方も大勢いらっしゃいます。
何もそこまでと思われる方は、信用のできる薪屋さんからきちんと仕上がった薪を購入されるのが一番ですが。
薪ストーブクッキング
薪ストーブの設置場所は?
A) 新築の場合、実施図面完成前に専門家の助言に耳を傾けることをおすすめします。その場合、間取り図のような簡単な図面を持参するのがいいと思います。
建物の都合で、排気効率がやや低下する「曲がり」や「横引き」を採用せざるを得ない場合もあります。しかし、十分に乾燥した薪をご用意いただくことで排気効率の極端な低下を防ぐことができます。湿ったり、雪で濡れたりした薪を使うと、火着きの悪化や煙突掃除回数の増加など、影響が即座に現れます。
建物と煙突の関係は?
A) 煙突の設置は、できれば外壁に沿って配置するのは避けたいと考えています。これは台風など極端な気象条件における破損や、断熱層への水の侵入などのリスクを防ぐためです。
天井を通って専用のチムニーフラッシング経由で屋根に立ち上げる施工方法がおすすめです。
秋田など積雪地帯特有の「すが漏れ」を心配される方もいらっしゃいますが、私たちが採用するチムニーシステムは、日本の住宅の建築構造と国内各地域の気象条件を知り尽くした、秋田県内においても豊富な実績がある製品です。
チムニーフラッシング(大仙市)
ステンレスフラッシング(秋田市)
ゆらゆら揺れる炎。薪がはぜる音。
側にいるだけで芯から体が暖まる感じ…
薪ストーブには、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という
人の五感に訴える癒し効果あるそうです。
自宅のリノベーションを機会に薪ストーブを導入される方も多いんだとか。
どうですか、薪ストーブライフ。
私は味覚の癒し派ということで、オーブン付きかな?
(協力:薪林舎代表 麻木 聡さん)