秋田沖の地震空白域
以前から気になっていた「秋田県沖の空白地帯」という言葉についてChatGPTに尋ねてみました。私の聞き方が悪いのか、「おっしゃる通り、私の以前の回答に誤りが含まれていました。」とかを3回も繰り返され、さっぱり前に進みません。ならばと軽くググってみたところ、さすがグーグル先生。一日の長を感じます。
秋田県沖の地震空白地帯
ここ200年ほどの間に北海道から新潟県の沖合にかけて、大地震が南北方向に次々と発生してきました。このように日本海沿岸で大地震がたびたび発生しているにもかかわらず、190年前の庄内沖地震(1833年 M7.5/以下、M=マグニチュード)*と40年前の日本海中部地震(1983年 M7.7)の震源域の間に挟まれた海域では、大地震が起きていません。この領域こそが「秋田県沖の空白地帯」にあたります。[*約220年前の象潟地震(1804年 M7.0)を引き合いに出す研究者もいます。]
日本海東縁のひずみ
秋田沖の空白地帯を含む南北に延びる幅数百Kmの地震地帯は、「日本海東縁ひずみ集中帯」もしくは「日本海東縁部変動帯」と呼ばれています。
政府の地震調査研究本部(以下、地震本部)によると、日本海東縁は太平洋側のように海溝(トラフ)からプレートが沈み込む、いわゆるプレート境界ではなく、活断層が帯状に存在するひずみ集中帯で、そのひずみを解消するために地震が発生すると考えらるとのこと。
日本海東縁は北米プレートとユーラシアプレートが衝突する場所です。ですが、この辺りはまだはっきりと海溝は形成されていないそうで、今まさに新たに海溝ができつつある段階とする見方が地震研究者の間で定説になっています。
(北米プレートの下にユーラシアプレートが沈み込みを始めているそうです。)
海底断層の海底のトレース
赤い線が海底活断層(出典:日本海における大規模地震に関する調査検討会)
津波の到達が早い
日本海東縁部ひずみ集中帯では、地震は陸地に近い海底で発生します。そのため津波の到達までの時間が短いという特徴があります。
日本海中部地震では、最大10mの第1波が早いところでは10分以内に襲来しました。この地震では全国で104人の方が亡くなりましたが、男鹿の加茂青砂海岸で社会科見学の途中、昼食に訪れていた児童13人を含む100人は津波により犠牲になったと言われています。
現在は八峰町になっている峰浜村では、ところによって津波が14mまで駆け上がったと、のちの調査で判明しています。
太平洋側であれば津波警報が出てから避難しても間に合う場所もあるそうですが、日本海の地震は数分で津波が来る可能性があるため、揺れを感じたら直ちに高台に避難することが重要です。
地震発生確率
日本海東縁部の地震発生確率については、地震本部が次のとおり長期評価を行い公開しています。
30年以内にマグニチュード7.5程度の地震が発生する確率は3%程度以下
発生確率が最大で90%以上の太平洋側の海溝型地震に比べると低い数値ですが、活断層型の地震ではやや高いIIランクに相当する地震と評価されています。
地震発生確率
地震調査委員会 2023年1月13日公表
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「ランク」について
2016年にM6.5、M7.3の地震が立て続けに発生し、甚大な被害をもたらした熊本地震(最大震度7)の、この時の30年以内の地震発生確率が0%~0.9%という1%未満の確率でした。このため危険度が伝わらずむしろ安心材料になったという反省から、確率は最も高いIIIランクから順に、IIランク、Iランク、Xランクの4段階の「ランク」で分類することになったそうです。(上図↑)
秋田県の想定
秋田県でも、日本海中部地震並びに東日本大震災を教訓として、連動地震を設定し、県独自の震源モデルを発表しています。
想定地震の震源域
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
想定地震(抜粋)
海域 |
マグニチュード |
最大震度 |
|
海域 |
マグニチュード |
最大震度 |
海域A |
7.9 |
6弱 |
|
海域A+B連動 |
8.5 |
6強 |
海域B |
7.9 |
6強 |
|
海域B+C連動 |
8.3 |
6強 |
海域C |
7.5 |
5強 |
|
海域A+B+C連動 |
8.7 |
7 |
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
代表地点の最大津波高と到達時間
海域A |
|
海域A+B+C連動 |
||||
地点名 |
最大津波高(m) |
到達時間(分) |
|
地点名 |
最大津波高(m) |
到達時間(分) |
八峰町 |
9.85 |
24 |
|
八峰町 |
14.36 |
28 |
能代市 |
7.06 |
24 |
|
能代市 |
11.41 |
27 |
三種町 |
6.58 |
26 |
|
三種町 |
11.80 |
26 |
男鹿市1 |
6.34 |
26 |
|
男鹿市1 |
10.82 |
25 |
男鹿市2 |
5.72 |
16 |
|
男鹿市2 |
9.82 |
14 |
潟上市 |
3.62 |
34 |
|
潟上市 |
11.47 |
32 |
秋田市 |
4.65 |
35 |
|
秋田市 |
13.61 |
34 |
由利本荘市1 |
2.91 |
33 |
|
由利本荘市1 |
11.27 |
31 |
由利本荘市2 |
2.17 |
31 |
|
由利本荘市2 |
10.80 |
30 |
にかほ市 |
2.29 |
30 |
|
にかほ市 |
10.14 |
29 |
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
空白域での地震
歴史記録に秋田県沖でのM7.5以上の大地震はなく、地震空白域と呼ばれているのは先述のとおりです。しかし、過去に地震空白域と言われていたにもかかわらず大地震が発生してしまった地域が多数あります。
例えば、
鳥取県西部地震(2000年 M7.3 震度6強)、
福岡県西方沖地震(2005年 M7.0 震度6弱)、
長野県北部地震(2011年 M6.7 震度6強)、
北海道胆振東部地震(2018年 M6.7 震度7)など。
地震本部の評価でも、地学的なデータや周辺領域での大地震の発生記録から、秋田県沖ではM7.5以上の規模の地震が過去に繰り返し発生した可能性が高いとされています。
むしろ最近は、空白域は大地震の前兆現象と見なす専門家が多いようです。
修学旅行の時に日本海中部地震に遭遇しました。連絡船の上で聞いたゴォーという海鳴りと帰宅に至る顛末がトラウマとなり、地震が来るたびにビビりまくっています。
私たちは1年間に1,000~2,000回の地震(震度1以上の有感地震)が起きる国に暮らしています。 日本全国どこにいても安心はできません。
せめて、自宅でも職場でも、
●建物の耐震性能を高める。
●ブロック塀など建物の周囲の安全チェック。
●感震ブレーカーなどの防火対策。
●室内の危険物転倒・落下・移動防止対策の徹底。
●家具の向きや配置を工夫して出入り口確保。
●日常備蓄の実践。
●家族で防災会議。
一番大切なのは、身を守ることです。
可能な限り準備を怠らず、その時に備えるしかありません。
秋田沖の地震空白域
以前から気になっていた「秋田県沖の空白地帯」という言葉についてChatGPTに尋ねてみました。私の聞き方が悪いのか、「おっしゃる通り、私の以前の回答に誤りが含まれていました。」とかを3回も繰り返され、さっぱり前に進みません。ならばと軽くググってみたところ、さすがグーグル先生。一日の長を感じます。
秋田県沖の地震空白地帯
ここ200年ほどの間に北海道から新潟県の沖合にかけて、大地震が南北方向に次々と発生してきました。このように日本海沿岸で大地震がたびたび発生しているにもかかわらず、190年前の庄内沖地震(1833年 M7.5/以下、M=マグニチュード)*と40年前の日本海中部地震(1983年 M7.7)の震源域の間に挟まれた海域では、大地震が起きていません。この領域こそが「秋田県沖の空白地帯」にあたります。[*約220年前の象潟地震(1804年 M7.0)を引き合いに出す研究者もいます。]
日本海東縁のひずみ
秋田沖の空白地帯を含む南北に延びる幅数百Kmの地震地帯は、「日本海東縁ひずみ集中帯」もしくは「日本海東縁部変動帯」と呼ばれています。
政府の地震調査研究本部(以下、地震本部)によると、日本海東縁は太平洋側のように海溝(トラフ)からプレートが沈み込む、いわゆるプレート境界ではなく、活断層が帯状に存在するひずみ集中帯で、そのひずみを解消するために地震が発生すると考えらるとのこと。
日本海東縁は北米プレートとユーラシアプレートが衝突する場所です。ですが、この辺りはまだはっきりと海溝は形成されていないそうで、今まさに新たに海溝ができつつある段階とする見方が地震研究者の間で定説になっています。
(北米プレートの下にユーラシアプレートが沈み込みを始めているそうです。)
海底断層の海底のトレース
赤い線が海底活断層(出典:日本海における大規模地震に関する調査検討会)
津波の到達が早い
日本海東縁部ひずみ集中帯では、地震は陸地に近い海底で発生します。そのため津波の到達までの時間が短いという特徴があります。
日本海中部地震では、最大10mの第1波が早いところでは10分以内に襲来しました。この地震では全国で104人の方が亡くなりましたが、男鹿の加茂青砂海岸で社会科見学の途中、昼食に訪れていた児童13人を含む100人は津波により犠牲になったと言われています。
現在は八峰町になっている峰浜村では、ところによって津波が14mまで駆け上がったと、のちの調査で判明しています。
太平洋側であれば津波警報が出てから避難しても間に合う場所もあるそうですが、日本海の地震は数分で津波が来る可能性があるため、揺れを感じたら直ちに高台に避難することが重要です。
地震発生確率
日本海東縁部の地震発生確率については、地震本部が次のとおり長期評価を行い公開しています。
30年以内にマグニチュード7.5程度の地震が発生する確率は3%程度以下
発生確率が最大で90%以上の太平洋側の海溝型地震に比べると低い数値ですが、活断層型の地震ではやや高いIIランクに相当する地震と評価されています。
地震発生確率
地震調査委員会 2023年1月13日公表
「ランク」について
2016年にM6.5、M7.3の地震が立て続けに発生し、甚大な被害をもたらした熊本地震(最大震度7)の、この時の30年以内の地震発生確率が0%~0.9%という1%未満の確率でした。このため危険度が伝わらずむしろ安心材料になったという反省から、確率は最も高いIIIランクから順に、IIランク、Iランク、Xランクの4段階の「ランク」で分類することになったそうです。(上図↑)
秋田県の想定
秋田県でも、日本海中部地震並びに東日本大震災を教訓として、連動地震を設定し、県独自の震源モデルを発表しています。
想定地震の震源域
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
想定地震(抜粋)
海域 |
マグニチュード |
最大震度 |
海域A |
7.9 |
6弱 |
海域B |
7.9 |
6強 |
海域C |
7.5 |
5強 |
海域 |
マグニチュード |
最大震度 |
海域A+B連動 |
8.5 |
6強 |
海域B+C連動 |
8.3 |
6強 |
海域A+B+C連動 |
8.7 |
7 |
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
想定地震(抜粋)
海域A |
||
地点名 |
最大津波高(m) |
到達時間(分) |
八峰町 |
9.85 |
24 |
能代市 |
7.06 |
24 |
三種町 |
6.58 |
26 |
男鹿市1 |
6.34 |
26 |
男鹿市2 |
5.72 |
16 |
潟上市 |
3.62 |
34 |
秋田市 |
4.65 |
35 |
由利本荘市1 |
2.91 |
33 |
由利本荘市2 |
2.17 |
31 |
にかほ市 |
2.29 |
30 |
代表地点の最大津波高と到達時間
海域A+B+C連動 |
||
地点名 |
最大津波高(m) |
到達時間(分) |
八峰町 |
14.36 |
28 |
能代市 |
11.41 |
27 |
三種町 |
11.80 |
26 |
男鹿市1 |
10.82 |
25 |
男鹿市2 |
9.82 |
14 |
潟上市 |
11.47 |
32 |
秋田市 |
13.61 |
34 |
由利本荘市1 |
11.27 |
31 |
由利本荘市2 |
10.80 |
30 |
にかほ市 |
10.14 |
29 |
出典:秋田県地震被害想定調査 報告書
空白域での地震
歴史記録に秋田県沖でのM7.5以上の大地震はなく、地震空白域と呼ばれているのは先述のとおりです。しかし、過去に地震空白域と言われていたにもかかわらず大地震が発生してしまった地域が多数あります。
例えば、
鳥取県西部地震(2000年 M7.3 震度6強)、
福岡県西方沖地震(2005年 M7.0 震度6弱)、
長野県北部地震(2011年 M6.7 震度6強)、
北海道胆振東部地震(2018年 M6.7 震度7)など。
地震本部の評価でも、地学的なデータや周辺領域での大地震の発生記録から、秋田県沖ではM7.5以上の規模の地震が過去に繰り返し発生した可能性が高いとされています。
むしろ最近は、空白域は大地震の前兆現象と見なす専門家が多いようです。
修学旅行の時に日本海中部地震に遭遇しました。連絡船の上で聞いたゴォーという海鳴りと帰宅に至る顛末がトラウマとなり、地震が来るたびにビビりまくっています。
私たちは1年間に1,000~2,000回の地震(震度1以上の有感地震)が起きる国に暮らしています。 日本全国どこにいても安心はできません。
せめて、自宅でも職場でも、
●建物の耐震性能を高める。
●ブロック塀など建物の周囲の安全チェック。
●感震ブレーカーなどの防火対策。
●室内の危険物転倒・落下・移動防止対策の徹底。
●家具の向きや配置を工夫して出入り口確保。
●日常備蓄の実践。
●家族で防災会議。
一番大切なのは、身を守ることです。
可能な限り準備を怠らず、その時に備えるしかありません。